目的を見失う2 ~手段が目的に~

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こんにちは!

英会話講師のTravis(トラヴィス)です。

昨日に引き続き、目的を忘れてしまって、本末転倒に陥るシリーズです。

格闘技 編 ~マインド・セット~

英語に限らず、格闘技の世界でも、目的を忘れてスパーリングで勝とうと必死になってしまうケースがあります。

この傾向は、ビギナーに多く見られ、このマインドセットから抜けだせないと、上達しません。

こうした練習ばかりしていると、試合でも勝てませんが、試合に出るようになると、「こんな練習方法では勝てない」と頭の良い選手であれば、気付くので問題ありません。

しかし。

試合に出ない会員の方が圧倒的に多いので、ほとんどの人は、半永久的に、格闘技ジムに通っているだけのビギナーに甘んじることになります。ジムにも依りますが、大体9割以上の会員は、試合出場しません。

目的が「格闘技技術の向上」「強くなる」「ストレス発散」「健康増進」と様々ですので、一概に、格闘技がうまくならなくてもいいのかもしれませんが、単なるフィットネスなら、エアロビや水泳教室でも良いわけで、わざわざマイナーな格闘技ジムを選んでくるわけですから、TVやネットで観たように、上手に、パンチやキックを放ちたいと考えた人が多いはずです。

いや、打撃に興味はなく、ダブル・ガードから、カッコよくベリンボロを決めて、バックを取って4ポイント奪いたいという方もいるでしょう。

そんな方は、1000人に3人以下のいわゆるセンミツという外れ値に当たります。

そんな方は、そもそも、ビギナー枠ではない、既に試合に出まくっているBJJ青帯以上の格闘技上級者です。試合で、ベリンボロ…難しいですよね。

そんな方は、絶賛公開中の映画「ファブル」にも出演しているカルペ・ディエム広尾の橋本知之先生のクラスを受講することをオススメします。橋本DVDは難しすぎて、長くて、眠くなるのでビギナーには、オススメはしませんが、上級者なら、誰もが絶賛する逸品です。

ヒート・アップ

技術向上を目指して、目ナラシやタイミングをはかるために行う軽めのスパーリングのことを、ボクシングやキックボクシングでは、マス・スパーリングとか、ライト・スパーリングと呼称します。

柔術やレスリングなど、他の格闘技でも、ライト・スパーリングという呼び方をしているのをよく耳にします。

マス・スパーは、試したい技を練習したり、カウンター練習をしたりする時に有用です。

フェイントを多用しながら、相手を騙して、自分の攻撃を当てる練習をします。軽く当てるだけなので、怪我を しにくいですし、そこまで疲れないので、何R(ラウンド)もできます。

しかし、相手の攻撃を貰うと、熱くなり、より強い攻撃で返してしまう人がいます。すると、相手も、熱くなり、お互いにヒート・アップして、いつしか、ガチンコの殴り合いに発展していることが多々あります。

そうなると、新しい技など試せないですし、タイミングを計ってのカウンター攻撃の練習なども、そっちのけで、その場で勝つことに執着してしまいます。レフェリーやジャッジはいないので、勝ち負けはつきませんし、無駄に疲労するだけで上達しませんし、怪我するリスクが高まるだけです。

「格闘技がうまくなる」という目的から逸れて、その場で「勝ったような気になる」ことが目的になってしまい、手段としてのスパーリングが意味をなさなくなります。これでは、何年、格闘技をやっても、集中して取り組んだ半年程度の選手に、すぐに追い抜かれてしまいます。

いつも、念頭に目的を置き、そのための手段を行っているんだ、という意識を持つことが大切です。

ガチ・スパー

上述のマス・スパーがヒート・アップして、途中からガチ・スパーになるのは、良くありませんが、試合形式で行うスパーリングもあり、この場合は最初から、ガチ・スパーです。大前提として、試合を控えた上級者が行う実践練習です。怪我のリスクがあるため、試合直前期には、行いません。計画的に行う上級者のための練習方法です。

ジムによっては、こうした練習を中心に据えているところもありますが、そうしたジムは、多くのプロ選手やプロ志望のトップ・レベルのアマチュア選手が在籍しているので、こうした練習が可能になるのです。

もしくは、各ジムのプロたちが出稽古で集まり、こうしたトップ・レベルの練習が可能になります。

武尊選手の所属するK-1ジム相模大野などは、こうしたガチ・スパーを軸に練習しているようです。

他方で、那須川天心選手は、ミット打ち練習を軸に、ガチ・スパーはあまり行っていないようです。しかし、あくまで、「比較問題」であり、両方行っているはずです。

ガチで!

わたしが柔術道場に入門したばかりの20年以上前、日本に柔術の黒帯は中井祐樹先生をはじめ、数名しかいませんでした。今は、2,000名以上いるようです。

現トライフォース代表の早川光由筆頭インストラクターでさえ、まだ、紫帯で、他のイントラは、全員青帯でした。当然、われわれ一般会員は全員白帯です。

それでも、相手がいないので、白帯同士で、スパーリングをしていました。

本当は、上級者と組んでスパーする方が怪我もしにくいですし、上達も速いです。

とはいえ、今の青帯レベルの白帯が沢山いましたので、問題は、ありませんでした。

皆、「ライトで!(ライト・スパーリングで、お願いします!)」と言ってから、スパーに入る中、やはり、途中から、ガチ・スパーになってしまう人がおり、そういう人は、なかなか上達せず、怪我をして離脱していった記憶があります。

そんな中、ひとりだけ、「ガチで!」と言ってから、スパーに入る若者がいました。

「ガチで!」つまり「ガチンコ・スパーリングをお願いします!」と、最初から言ってくるわけです。途中から、ヒート・アップするのではなく、目的は、その場で、ガチで関節を取り合って、どっちが強いか決めようぜ!という若者です。アホか!?

「コイツ、クレージーだ!」と思いつつ、途中からヒート・アップするよりは、目的が明確なので、緊張感をもって、本気で関節を取りにいきます。最初からわかっているので、怪我はしにくかったです。

彼は、プロレス最強説を唱え、武藤最強!を力説していました。

格闘技を真剣にやっていたわたしは「コイツ、絶対にバカだ!」と信じていましたが、相手も、わたしを「わからず屋」だと思っていたようです。

米国では、劇場などのショー・ビジネスとスポーツとでは、税率が異なります。米国最大のプロレス団体WWE(旧WWF)は、IRS(税務当局)と争った際、プロレスには「脚本」があるから、スポーツではなく、ショー・ビジネスだと主張して、安い税率を勝ち取っていました。

そう、プロレスは、格闘技ではなく、筋書のある「ショー」なのです。

そんなことも、わからんのか!?と。

試合に出てみれば、分かりますが、3分間全力で戦うだけでも、酸欠で倒れそうになります。空手の試合では、本戦3分間で引き分け判定だと、2分間の延長が2回もあり、そこまで、ある程度 勘案してペース配分していくのですが、あまり省エネで戦うと、本戦の3分で負けてしまいます。

プロレスのように、大の男たちが、30分一本勝負など、できるはずがないのです。

プロレスは、お互いに、あうんの呼吸で、技を出したり、受けたり、観客の様子を見ながら、盛り上げるショー・タイムの30分間です。

しかし、彼は、ガチ・スパーを長年続けた結果、MMAにも参戦して勝利を重ね、柔術でも昇級していき、着実に黒帯に近づいています。

途中から、ヒート・アップするのではなく、明確な目的を持って、最初から「ガチで!」は正しかったのかもしれません。目的と手段を混同せず、両者を最初から明確にすれば、目標達成していけるのでしょう。

私が引越のため、道場を移籍したのを機に、彼とはスパーリングをしていませんが、彼は弁護士なので、時々、法律相談をしています。

当時、イソ弁だった若者は、都心に自分の弁護士事務所を構えるまでになっています。

お互いに、歳を取りましたが、あの頃の熱い気持ちは変わりません。

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